日本の医療保険

経済大国からすべり落ちた日本だが、歯科エイズ大国の地位は微 動だにしない。どうしたら歯科エイズ大国からすべり落ちることができるのか。日本の医療保険は病気の治療に給付するのが中心で、予防のことはほとんど念頭にない。歯の病気はじわじわと進行する。しかも、口をあけてみれば、素人でも病気の有無はかなりの程度まで見当をつけられる。ひどくならないうちに手を打つことができる。言いかえると、歯の病気はがんやエイズに比べたら予防しやすい。ふだんから定期的に歯科医へ受診に行っていたら、歯の健康状態はずっとよくなる。 しかし、予防のための検査や処置はほとんど保険がきかない。 たとえば唾液テスト。むし歯の原因となる細菌が唾液にいるかどうか、多いか少ないかなどを調べるテストだが、保険は適用されない。患者は自費で4000円ほどとられる。このテストをすれば、むし歯になりやすいか、進行が速いか遅いかがわかるはずだ。治療にもたいへん役立つ。にもかかわらず、 保険から締めだされている。唾液テストを行えば、患者のむし歯に事前に対処できる。まさに予防である。だが、予防であるからこそ、保険の対象にならない。これでは、むし歯をなくすことはいつまでたっても不可能だ。医療保険はこの現状を是認している。キユア(治療)からケア(予防)へは、二一世紀の医学および歯学の大前提である。歯の病気は本来 予防でコントロールしやすい、あるいはすべきであるだけに、治療優先、予防軽視の医療保険には致命 的欠陥があるといわなければならない。